去る9月の休日、いつもとは一風変わった人物入りの撮影をした。
人物入りの撮影はやっていると楽しくなり、私の好きな撮影であるが、
この日は撮影モデルに家族を起用するという、私には初めてのものであった。
私の妻は仕事で不参加であったが、我が家からは息子2人が参加した。
長男は8歳ということもあり、初めから割と淡々と受け入れて当日を迎えていた。
3歳11ヶ月の次男は、父親の仕事の手伝いと聞いてかなり前から意気込んでいた。
その為か、彼は早朝4時に自ら目を覚まし、彼なりに準備をしていたし、
普段は車に乗ると寝てしまうところ、自宅の埼玉から撮影場所の山梨の道中ではずっと起きていた。
それくらい気が張っていたのだろうと思う。
撮影内容は、新たに造営された広場で人々が自由に集い、憩うシーンを狙うものであった。
息子たちの他には、弊社代表の家族(夫人、娘さん)、ご依頼主である設計者の家族が参加した。
自由にさせていても十分勝手に動く年頃の子供達ではあったが、
して欲しい人の動きなどは、シーンごとに指示を出す必要があったので、
息子たちにも、「カメラがここまで来たら合図をするので、向こうに移動して」のように、
普段の大人のモデルさんの撮影でするような指示をしてみた。
すると長男が、あまり指示内容を把握できていない次男をリードするように動いてみせた。
8歳ともなると撮影というものを理解して、あくまで自然を装うこともするのか、と
私は自分の立場も忘れて感心してしまった。
そんなこんながあって、無事に撮影はクランクアップを迎える事が出来た。
子供達にとって、自分の親が仕事をする姿というのを目にする機会は少ないだろう。
その一片でも見せる事が出来たのなら、この上ない喜びである。
そしてそれ以上に、その日その瞬間の家族の姿を記録できたということが、
撮影した素材を眺めている今、価値あるものだったと思うのである。
これは私たちの仕事である写真、映像で記録するという事の原点であり、
建物やランドスケープ、そしてそこに写る人の「今」を「未来」に残す意味、
それを初心に帰って考えて、より楽しく有意義に仕事をしていきたいと思える出来事であった。
撮影を終えて帰路についた次男は、3分で眠りにつき、家に着くまで夢の中であった。
今回の話の動画
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